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風土があるから文化になる それを体感できる「糸満ハーレー」

沖縄県の中でも糸満市は特に旧暦を大切にしている地域です。他に類を見ない独自の発展を遂げてきて今に続く地域と言ってもいいくらいです。

今日は「ユッカヌヒー」と呼ばれる日。ユッカヌヒーとは旧暦5月4日のことを言います。新暦を用いる現在では本日6月6日がこの日に当たります。起源は沖縄の港町や漁村で「ハーレー(地域によってはハーリーと呼ぶ)」という祭事を行う日のことです。漁業の繁栄と航海安全の祈願を主としたもので爬竜船の競争が行われる地域の一大イベントです。

会場は糸満漁港中地区。出場する1000名近いハーレーシンカ(漕ぎ手)をはじめ、糸満に古くからある三つの村「西村」「中村」「新島」の方々。お祭りを楽しむ子どもたちや応援する友人や家族が会場を囲み、競技のスタートを待っています。

糸満ハーレーはウグァン(御願)から始まります。神事性を重んじるこの場は南山と糸満のノロや神職者、門中の世話人が糸満漁港を見下ろす山巓毛(サンティンモー)に集まります。各々がビンシー(携帯用の道具箱で泡盛をいれる酒器、杯、3つに仕切られた米入れ、賽銭、先行、ウチカビを納める)を片手に東西南北の全方向に向けて航海の安全や豊年を祈ります。

競漕はウグァン(御願)バーレーから始まります。南山時代から旗を振る役目を受け継ぐ徳屋当主がサンティンモーから港に向け旗で競漕開始の合図を送り、この合図で港に待機している三村のハーレー舟がスタートを切ります。会場からはハーレー鉦やパーランクー(エイサーで用いられる手持ち太鼓)、声援が響き渡ります。

撮影:糸満市

1位を勝ち取ったチームは神妙な面持ちでありながら、勝利をつかんだ勇ましい顔で白銀堂で待つ仲間と喜びを分かち合います。白銀堂には境内の南側に御嶽(うたき)と呼ばれる巨大な岩と神木が置かれている神域があります。ここではウグァンバーレーの順位で祈願を行います。航海安全や豊漁、家内安全などのありとあらゆるお願いをする瞬間です。

沖縄県では約40か所でハーレーが行われています。糸満でしか行われていない競漕の花形「クンヌカセー」は見るものを大いに楽しませてくれます。クンヌカセーとは転覆競漕を意味し、スタートの合図で漕ぎはじめます。決められた位置にたどり着くと一斉にハーレー舟を転覆させる。泳ぎながら舟を戻し、再び乗り込んで水を掻き出しながらもゴールを目指す糸満独自のものです。

糸満ハーレーの最後を飾るのが「アガイスーブ」です。各村の中でも選りすぐりのシンカ12名で出場し最も長い距離である2,150mを競います。一番の盛り上がりを見せるのがこの瞬間です。

一着でゴールした村のハーレーシンカ達は自分達の陣地に戻り、勝利の喜びを分かち合うために指笛やパーランクーを鳴らしカチャーシーを踊ります。

アガイスーブ終了後は、伝統に則ってヌン殿内(神官の家)に行き、各村に古くからあるハーレー歌を歌いながら門をくぐります。神棚の前では古来から続く方法で杯をうけ、粛々と奉納を進めます。

イベントとなるといろんな人を楽しませるために手を変え品を変えプログラムがつくられます。ですが「糸満ハーレー」は違います。糸満ハーレーの良さは伝統を重んじているところです。参加する人、見る人が一体になれる場所です。平日であろうと必ずユッカヌヒーに必ず行われます。神事の一つという風土が根付いているからです。

冒頭で「イベント」という言葉を使いましたが糸満ハーレーは違う領域だと思います。観光客を入れて楽しんでもらうための商業型イベントではなく、地域に根差した思想や長い歴史を変えることのなく思いのみで実施している地域密着型の行事です。

風土があるから文化になります。多様性だなんだと言っても根幹にあるのは個人の思いです。思いを受け継いで行ったり、変容させていくから風土となり文化になります。それを体感できる「糸満ハーレー」。
糸満の夏が始まります。

この記事を書いた人
北村 正貴

1985年群馬県桐生市生まれ、沖縄県糸満市在住、ファシリテーター。2013年より地域おこし協力隊として単身沖縄へ。糸満市内で地域コミュニティの再生や集落の自立的発展を目指し活動。2015年、沖縄、ふるさと百選(集落部門)受賞。2018年に北村ファシリテーション事務所を設立。「多様な人が集う場を対話のできる場に」をテーマに行政、コミュニティ組織(自治会/町内会/まちづくり協議会等)、NPO団体、市民団体、企業など社会課題の解決と新しい価値の創造に取り組む多様な主体のコンサルティング支援を行う。

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