前回の記事では「地域を元気にするためには個人の力」とお伝えしました。地域づくりは日々動いていくものだからこそ、個人の力すなわち住民の力が重要になってきます。
とはいえ個人の力を養っていくにはどうすればいいかと迷われる自治会や地域づくり担当の役所も不明確なところが多いのではないでしょうか。
私が地域おこし協力隊時代に行ってきた「地元学」はシンプルですぐにでも実行に移せる考え方、取り組み方です。今回はその「地元学」の考え方をお伝えします。お読みいただき、実践してもらうことで地域づくりに取り組むみなさんのお役に立てれば嬉しいです。
地域を元気にする「地元学」
「地元学」とは熊本県水俣市の吉本哲郎氏(私の師のひとり)が提唱する実践的な手法です。住んでいる地域を足元から見直して地域を元気にしていこうというものです。
地元学は人、自然、経済の3つを元気にします。地域にあるものを調べて共有することによって、それをきっかけに地域住民との接点を生みます。
地域づくりを行う特に農村部では、そこで暮らすために様々な知恵と技を必然的に持っています。ですが当たり前にあることだからこそ本人たちも気づきにくいものです。それらを気づいてもらうために「あるものさがし」を行うことによって地域に昔からあるものに注目されるきっかけになります。
地域には多種多様な当たり前のものやことが溢れています。注目をすることで、気にかけるようになったり、地域をなんとかしようという動きが出てきたり、周囲の住民にも気を配る変化が生まれます。
例えば、地域を調べて大切にしたい素材があったら「みんなで守っていこう!」という動きがそれです。その守っていきたいものを未来につないでいくために、地域で管理をする行動につながります。当たり前にあるものに気づくことによって、身の回りの自然や物事が注目されます。
活動が地域に浸透していくと、おのずと地域外の方の目にも触れやすくなるため、より一層元気が湧いてきます。地域内外の人が集い、この場所を守っていこうと励むようになり、知恵をみんなで出すような雰囲気も生まれます。
この喜びを共有することで持続的な活動が期待できるようになります。
あなたは地域をどのくらい説明できますか?
人口減少、少子高齢化が進む地域で必要な視点は自身が住んでいる地域を住んでいる人たちが説明できることです。地域の変化を馴染ませながら受け入れていくためには、地域を知り、自分を知り、個性を把握していること、自信を持っていることが大事です。
地域の方とお話をさせていただく機会が多いですが、ほとんどの方は「うちの地域には何もない」と打算的な発言をします。どうでしょうか。このような発言をする大人が多い地域に子どもたちは将来住みたいと思うでしょうか。私はそうは思いません。
本人からしたら他愛のない発言かもしれませんが、その発言が子どもたちに「うちの地域には何もないんだ」と錯覚し、それを補うために外にばかり目が行ってしまいます。恋愛もそうだと思いますが、自分に自信がなく「私なんて…」「誇れるものが何もない…」という人は人に好かれるでしょうか。
「うちの地域には何もない」…地域の上の世代の常套句になっている。真剣に地域を見ていますか?何を見て何もないと言ってますか?こういう大人が多いと子どもたちもそう思うようになる。無いと錯覚し、補うために外にばかり目が行ってしまう。他愛のない発言だろうけどその影響力は勝手に大きくなる。 https://t.co/QuqpuJeTB8
— 北村 正貴 |組織づくりファシリテーター (@ktmr_masaki) February 11, 2020
人が暮らしている場所には暮らす理由があります。暮らす理由があるということは素晴らしいものが潜んでいる可能性が高いです。「こんなものが…」と思うようなことも外の人から見れば新鮮で価値のあるものになります。
思いをつくるためには既存要素を組み合わせる
地域づくり会議の議題であるのが「新しく何かをしよう」「そのために何をしようか」という企画会議的なものが行われます。人が少ないから担い手をどうしよう、ゴミのポイ捨てを何とかしたいなどアイデアを出す場面は地域でもたくさんあります。
ですがいいアイデアなんかすぐ出ないと思う方が経験値として多いのではないでしょうか。いくら人を集めて会議をしたとしてもこれまでのやり方で出なかったのであれば今後も出る望みは少ないと言えます。そこで有効なのが地域にあるものを列挙していくということです。
アイデアとは既存要素の組み合わせ以外のなにものでもない
ジェームス・Web・ヤング 著 「アイデアのつくり方」
地域にあるものを何でもいいのでたくさん出します。大切なのは質より量です。真新しいものを出すのではなく、「地域にあるもの」です。なんでもいいんです。子どもが集う場所がある、庭いじりが好きなおじさんがいる、あの道路にはポイ捨てが多い、違法駐車が多いなど、良い点も悪い点も思いつくもの全部です。
新しいものというのはすでにあるものの組み合わせです。電話とインターネットの組み合わせがスマホ、肉屋と魚屋と八百屋の組み合わせがスーパーマーケットのようにです。
すでにあるものを出してしまえば、「うちの地域にはこんなに資源があったんだ」と気づくことができます。気づくことで地域に対する見え方が変わってきます。あとはどう組み合わせていくかです。ただくっつけるのではなく、くっつけるための仕組みづくりも必要です。
地域が元気になるための3か条
仕事で自分の役割があるように、地域づくりでも自分にしかできない役割というものが潜んでいます。地域の持つ歴史や名所、どんな人がいるか、どんな産業があるか、どんな課題があるかなどを掘り下げると自分の役割というものが見えてきます。地域を知って元気になるための3か条は以下です。
- 地域や人が持つ力を引き出す
- 地域にあるものを地域のみなさんで再確認できる場をつくる
- 主体となって動ける人が意識してそれらを伝えていく
前項で伝えた「あるものを列挙する」ためには自分たちで自分たちを見つめ直すことが必要です。定例で集まる場があるのであれば、宿題を出して次回の集まりの時に発表してもらうなど場をつくることが求められます。
定例会に集まる人が役員のみで限られており、住民を呼ぶのが難しいのであれば大々的に発表会を行うこともひとつの方法です。地域にはいろんな人が住んでいます。昔からそこに住んでいる人や移り住んできた人などいろんな思いや人の歴史が集まっているのが地域です。また、子どもの視点も大切です。子どもの視点は柔軟で大人たちが気づかない視点を持っており、大人では思いつかないことも言わないだけで持っているかもしれません。
これらを共有することで地域の暮らしに目を向けることができ、出てきたものを組み合わせることで新しい元気が生まれ、地域を見直すことができます。
濃い関係性のあるチームは
— 北村 正貴 |組織づくりファシリテーター (@ktmr_masaki) January 12, 2020
これらが習慣化している
・人と人は違うを理解してる
・人の強みの生かしかたを実践
・常に目的目標を共有してる
・最適なコミュニケーション
当たり前と思われがちだけど深堀りするとなかなかできていないことに気付かされる。
以上が地域を元気にするアイデア~考え方編~です。
これらは日々の活動の中で少しずつ変えられるものです。
結果を変えるには過程を変える必要があります。
あなたのちょっとした変化で地域が良い方向に行くことを願っています。