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Fの相談室

まちづくりと人材育成とファシリテーション

「まちづくり」と「地域づくり」。端から見れば同じように聞こえる言葉です。私たちが暮らしていくためにいろいろと整備すること、つくっていくこと、残していくことなどを総称するとこれらの呼び方ができると思います。みんなが関わる「社会」をつくっていくための取り組みですよね。

まちづくりは行政がするもの。地域づくりは住民がするもの。まちづくり系のワークショップをする際はこのように使い分けていました。理由としては、混同させてしまうことで誤った解釈を参加者に植え付けてしまう懸念があるからです。

私は以前、総務省の制度である地域おこし協力隊として沖縄県糸満市で活動をしていました。その活動のひとつに「自治会の後継者不足を支援する」がありました。ここでいう「地域づくり」のサポートです。私がファシリテーターと名乗るスタートでもあります。地域づくりは人間と人間の協働作業です。現代で言えば仕事でも必要な素養です。

「まち」とは個人の家と各事業所、小売店や飲食店、学校に病院に役所などの公共施設が混在している空間です。今だと”でした”と過去形にした方がいいかもしれません。そのまちに住む人と仕事や買い物、余暇のために来る人が同じ空間で交流することで成り立ってきました。

しかし、今では住宅街ができ、商業街ができ、それらを自家用車で行き来することで、「暮らし」というものが進化してきました。狭い範囲内に混在していた住宅は空き家になり、小売店や飲食店は空き店舗になり、空き地になり、「空き○○」が点在する空間になってしまいました。

とはいえ義理や人情、人間臭さが残っているところもあり、人を惹きつけている空間はまだ残っていると思っています。人の暮らし方が変わり、まちの様子が変わる今でも、地域のために!と頑張っている人たちがいます。思うに身の回りを良くしようと活動する方々はまちづくりと地域づくりのハイブリッド型の「社会づくり」をする人々と言っていいかもしれません。

社会づくりのことを記す前に、地域づくりをする自治会(町内会)に触れようと思います。

私が地域おこし協力隊として活動したなかで、多くの時間を費やした課題は「住民にどう地域活動に携わってもらうか」でした。20代から40代の住民は働き盛りであることから、地域社会と距離が生じてしまい、自治会の高齢化が問題視されています。

今ではどこにでもある話になりましたが、地域清掃や行事祭事の運営を限られた人でしかできない状態です。住民会議の参加が少ないため、決めたいことが決まらない、決まったことが浸透しないなど、細かな課題を自治会はたくさん抱えており、解決の糸口を探す毎日でした。

かつて自治会は、行政と住民との橋渡し役といわれてきました。ですがお互いに権限と予算をもつ行政と自治会では、対等の関係ではないという事実もあります。その結果として、行政は自治会を利用しているという構図が浸透してしまい、自治会は行政に頼り、問題解決を行政に求める姿勢になってしまいました。

後継者不足が嘆かれている自治会は、持ち回りで会長役を決めるところが多い印象です。不本意に自治会長になるケースもあります。これが当たり前になっていることから、地域住民と関係性を作れていない人が会長になり、地域活動をけん引しなければならない事態も起こっています。時間的な負担も多いことから、自治会を辞めたいという声も少なからずあります。なかには自治会を無くして役所がやればいい、という声も少なくありません。

自治体によっては自治会加入を勧めるチラシやリーフレットを移住してきた住民に窓口で渡す取り組みがあります。行政の立場として自治会への加入を強制できないのですが、自治体、自治会ともに自治会の必要性を大切にする思いから実施した取り組みと感じています。

しかし、自治会の必要性を、行政から問われるよりも、地域の実情をふまえて住民相互の関係のなかから自治会が自らで必要性を考え、住民に説明をしていくことで説得力が増すと考えています。

そのうえ、関係性を構築するきっかけづくりにもなると感じています。自治会主導で行政がサポートする関係性を持ちながら活動を進めることで、地域住民にとって自治会がどういう意味をもっており、いまどんな活動をしていくことが望ましいかの課題の共有もできるようになります。そうでないと地域のさまざまな課題にぶつかるたびに体制を整えないと動けない状況になると思います。行政から自立するには、自治会自身の意識改革が求められていると感じます。

一方で社会づくりをしている人の挑戦のスタートはキーパーソンを中心に結成されたコアメンバーとなるチームが「情熱」を共有し、社会づくりの方向性を模索するところからはじまります。異なるバックグラウンド、感受性、価値観を持つ人が集まって、「社会づくり」のチームを協創することは、並大抵のことではないと思います。感覚だよりになってしまう地域への思いはチーム内で共有をしていても同じ温度や熱量にはなりにくく、孤軍奮闘する人も多いです。自らがリスクを負って一歩踏み出してみたり、お金を払えば簡単にできることを、目的を持ってみんなと作業をしたり、段飛ばしせず着実に取り組んだりと、目指したい社会に向けて地道な努力や細かな工夫が感じられます。

合併を繰り返し、形成している自治体のまちづくりと、古くから活動をしている自治会の地域づくりは、その変遷を追っても明確に区分しにくい部分があります。自治体の業務の多くは、住民が共同生活を送るうえで必要となる諸問題を扱います。防犯・防災、環境衛生、道路・下水などのインフラ整備といった事柄です。法令の規定と税負担の規模の関係で制度的には区別されていますが、活動の機能的な面でいえば、連続的なものになります。この関連が行政と自治会の関係の不明確な部分を生んでしまったのではないでしょうか。

自治会の自立力の弱さは、これまで行政の自治会への介入の結果として強調される傾向がありました。新聞や週刊誌、ネットニュースなどの自治会(町内会)関連の記事によくみかけるように、「行政の下請けが自立を阻む」とらえ方です。これは自治会と行政を対抗関係におき、行政が自治会の自立を阻んできたとみる見方と捉えることができます。

こうしたことから、自治会の自立を妨げてきたのは住民の高齢化や多様化などという曖昧なな課題感ではなく、行政も起因しており、行政が変らなければ自治会は自立できないと自治会も思い込んでしまう構図が生まれ、変容できない環境になったのではないかと考えます。

行政の「下請け」と思われてしまう所以には、自治会の運営に対して行政から行われるさまざまな支援があります。そしてこれらによって自治会が存続できているところがあり、しかも、自治会と行政との業務上の連続性は、これらの支援をなくすことが自治会の自立につながるとは短格的に言えないからです。自治会が行政から自立できる力を持つためには以下が必要です。

第一は、地域の共同生活を住民としてどうしたいのか、について地域住民自身で目標を定め、それを自覚する必要があると考えています。自治会の活動目標は自治会規約の目的に書いてありますが、これだけでは具体性に欠けています。「住みよい環境の整備」であれ「住民の親睦」であれ、現状を踏まえて短期、中長期の目標をつくることが重要です。日常を思い返して必要だと思う課題の解決を目標に掲げることが地域の秘めた力を蓄えていくスタートラインになります。

それには集会所のような環境整備的なものから、近所との関係改善のようなもの、あるいは伝統文化の継承や発展といったものなど、多様な目標を掲げられます。これらを決める主体は住民自身です。そしてこの目標を広く住民が自覚して共有するとともに次の役員にも安定的に引き継いでもらうためにも、具体的な言葉で表しておくことが求められます。

地域おこし協力隊として介入した糸満市の大里地域では地域住民と未来を考え、行動に変えていくきっかけづくりとしてワークショップを実施しました。大里地区は琉球王朝の南山時代から湧水が出る憩いの場所として発展した城下町でした。しかし近年ではインターネットの普及から無料で水遊びできる場所というイメージだけが浸透してしまい、地域外から訪れる方が増え、違法駐車やごみのポイ捨てが増えるなどの迷惑行為が散見されました。

大里地域に住む方であれば、その場所の重要性や伝統、意義などを理解できましたが、よその人となると大切さが伝わらない現状です。地域資源を地域の担い手である若者と自治会役員でワークショップを行い、どう守っていこうか案を出し合い、その決意として思いを言葉にした看板作成などを行いました。

このように住民同士で対話し、創り上げたものが経験として地域に増えていくことで、行政のさまざまな施策が、自治会の掲げた目標の実現を後押ししてくれるものにつながり、自分ごとにしやすくなると考えています。

チームができて組織として動き出し、課題を解決する手段が企画され、具現化されていきます。自分たちが住む地域のためには具現化した取り組みの積み重ねや継続していくことや多様な関係者を巻き込み、チームの輪を大きくしていくことが重要ですが、容易なことではありません。思いを持ったコアメンバーや周辺のサポーター、地域外の住民、行政など、地域づくりに関わる人なら誰もがぶち当たる壁です。地域活動を自分ごとにしていく仕組みや、タブーを撤廃して仕組み化すること、やっている自分たちが一番楽しむことで、その壁を乗り越えるヒントを与えてくれるのかもしれません。

自治会が組織力を持って行政から自立することは、自治会と行政が無関係になるということではありません。

自治会の行政からの自立を目指した力を上げる策の二つ目は、自治会が主体となって国や都道府県、市町村の支援制度を活用することです。協力隊活動で関わることのできた沖縄県西原町の平園自治会の活動は、県や町の助成によって、さまざまな自治会運営モデルになっています。

行政改革の進行と住民自治の推進の観点から、自治体の自治会振興政策のあり方が変ろうとしていると感じています。それは助成金や補助金の見直しと減額の動きです。たとえ交付される場合でも、従来の行政の縦割り型の助成から住民組織にまかせる包括型への転換、そして、均等型の助成から事業提案型の助成への転換が求められます。

いずれも自治会の主体性が問われ、また主体性を育てようとする動きにもつながります。行政の提起するメニューに振り回されないためにも、自治会として活動を進める明確な目標が必要であり、この目標の実現のためにこそ、行政と自治会の協働が図られるものだと思います。

地域をよくすること、社会をよくすることは外部環境の変化が大きな影響を与えていると思います。外の変化に追いつけ追い越せで携わる者すべてが危機感を持ち、なにか行動を起こしたいと熱い思いを持って立ち上がるケースが多いと感じます。

一方で地縁がなくても社会づくりの楽しさに魅かれて奮闘する新しいケースも出てきています。すべてのケースに共通するのはまちづくりや地域づくりに対して、並々ならぬ熱い思いで挑戦しているキーパーソンとなる人の存在です。そのタイプはリーダーシップ型や縁の下の力持ち型など多種多様です。これも仕事のやり方と一緒ですよね。

「こんな時代だから仕方ない」と簡単な言葉で片付けてしまうか、「こんな時代だからこそやってやる」かで将来が大きく変わります。自分たちで考え行動をする習慣こそが自治会の存在意義につながるとともに、まちづくり力に起因するものと考えています。

ここまで、つらつらとまちづくりと人材育成とファシリテーションについて思うこと、感じることを書いてきました。私が最後にお伝えしたいことはひとつ。

「自分を大切にしながら誰かのことを考えて活動することが成長」ということです。

「仲間と一緒に活動をしたい」「家族や友人とステキと思える時間を過ごしたい」と思うとき、自分が関わっている人たちとはすでにチームメイトなんだなと感じています。人材育成や組織開発のファシリテーションをしていると改めて気付かされます。

自分たちの暮らしを豊かにするために仕事仲間や家族や友人とさらによいチームをつくることで、さらによい協働を生むことができます。みんなで幸せになるために「自分ができること」を気付かせてくれる、増やしてくれる強力な武器です。

ぜひこの記事をきっかけに人との「関わり方」「つながり方」「一緒にやっていくやり方」を考える人が増えて、日本という国が前向きになり、アップデートされていくといいなと思います。

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記事を書いた人
北村 正貴

1985年群馬県桐生市生まれ。沖縄県糸満市在住。人材育成や組織開発、働き方改革のコンサルティング、講座や研修を行う。一方で地域おこし協力隊の経験を活かし、行政やコミュニティ組織の未来創造/プロセスデザインに向けた対話の場の企画運営に携わる。230組織1500名をサポート。ファシリテーター。初級地域公共政策士(認定番号 第F15-0427号)。

多くの依頼は「組織の運営上の課題を話し合いで解決したい」という漠然としたご相談から始まります。

北村ファシリテーション事務所では、企業、自治体、コミュニティ組織(自治会、町内会、まちづくり協議会)、NPO法人など様々な組織のご相談も積極的をお受けしております。

ご相談を通して要望を整理し、最適な要件を抽出。ワークショップや研修プログラムとして具体化・実行・定着を目指したご提案をさせていただきます。

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