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コラム

パブリックコメントを出して愚痴を自治に

「愚痴を自治に」
私が地域づくりに関心を持ち、地域おこし協力隊として沖縄県糸満市で活動をしていた時代に知り合った大先輩が言っていた口ぐせです。私の活動の根幹にある原点回帰できる言葉です。
先日、こんなツイートをしました。

あーだこーだは誰でもいえるが、あーしようこーしようと行動に移せる人は限られていると思います。見方を変えれば、多くの人が愚痴を自治に変えられればもっと社会が良くなる。もっと住みやすい地域になる。他人ごとにするか自分ごとにするかで未来が変わってくる、そう信じています。

「委ねる」「任せる」のも大切だけど、せっかくなら「一緒につくる」を頭の片隅に置いて活動したい。良し悪しだけの「点」の判断だけではなく、なぜ良し?なぜ悪し?の「線」の思いを持って、チームで「面」の活動をしていくことが課題解決、価値創造に不可欠だと思っています。

さて、私はまちづくりを行政だけがするもの、ではないと考えています。
この記事には行政と住民の懸け橋になる「パブリックコメント」の意義ややり方を記しており、誰しもが社会を自分ごとにする(できる)きっかけづくりになってほしい思いを込めてまとめました。

そもそもパブリックコメントってなに?

みなさんは「パブリックコメント」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
e-Gov(電子政府の総合窓口)では、次のように説明されています。

国の行政機関は、政策を実施していくうえで、さまざまな政令や省令などを定めます。これら政令や省令等を決めようとする際に、あらかじめその案を公表し、広く国民の皆様から意見、情報を募集する手続が、パブリックコメント制度(意見公募手続)です。

パブリックコメントは、国の行政機関が政令や省令等を定めようとする際に、事前に、広く一般から意見を募り、その意見を考慮することにより、行政運営の公正さの確保と透明性の向上を図り、国民の権利利益の保護に役立てることを目的としています。

出所:e-Gov「パブリックコメント制度(意見公募手続制度)について」(https://www.e-gov.go.jp/help/public_comment/about_pb.html)

つまり、「計画等を決める前に、住民みんなの意見を聞きます。思うところがあったら言ってくださいね。」という制度です。

例えば「第5次糸満市総合計画基本計画」「第2期糸満市まち・ひと・しごと創生総合戦略(案)」、「糸満市6次産業化・地産地消推進戦略(案)」「糸満市立認定こども園在り方計画書(素案)」などの案件について意見募集中がされています(案件によっては終了)です。
現在、糸満市のパブリックコメント案件一覧は次のリンクからご覧いただけます。

パブリックコメント | 糸満市

パブリックコメントの良いところは、地域の政策に対して、誰でも意見を提出することができる点です。とはいえ、出した意見が必ずしも反映されるわけではありません。

みなさんも一度は「こんなまちに住みたいな」「ここを良くしてほしい!」などあるかもしれません。ですが、愚痴をこぼすだけでは行政やまちづくりをする人たちに届きません。そのため、仮に「こんなアイデアはどう?」とは感心のあるテーマがあったら、気軽にパブリックコメントを提出してみてはいかがでしょうか。

住む町のパブリックコメントを出そう

とはいえ行政がつくる文章は固く、難しい行政用語が並んでいます。これは仕方のないことです。行政はまちづくりのシステムを作る側の人たちなので住民が使う「市民の言葉」とは根幹が違います。住民が暮らしやすい「仕組みを作る言葉」を使わないといけない宿命を背負っています。

これを理解したうえで自分の暮らす地域のことについて考えてみてはいかがでしょうか。福祉のことでいえば、自分のおじいちゃんおばあちゃんのこと、子育てのことでいえば、自分の子どもやこれから生まれてくる次世代の子たちのことと照らし合わせて考えられると思うんです。

現在、私の住む糸満市では下記のページで、意見を募集しています。

https://www.city.itoman.lg.jp/docs/2021012800059/

「第5次糸満市総合計画基本計画(案)」と「第2期糸満市まち・ひと・しごと創生総合戦略(案)」について意見を募集しています。両方で100ページある計画案ですが、すべて読む必要はなく、自分の気になるテーマだけ読んで、意見を書くだけです。ぜひ一度チェックして、どのような計画が進められているか見てみてください。

パブリックコメントの書き方

パブリックコメントは、幅広い意見が市民から出ていることが重要です。ということは気軽に自分の意見を出してみることが大切であり、愚痴を自治に変えることができます。

せっかく書くなら少しでも自分の意見が反映されたほうが嬉しいと思います。そこでこれから「あなたの意見が計画に反映されるかもしれないヒント」をご紹介します。

パブリックコメント募集の位置づけとタイミング

筆者が糸満市で居住、事業を行っていることから糸満市に着目し、計画策定がどの位置づけられているのかをお伝えします。

糸満市で令和3年度(2021年)から策定される「第5次糸満市総合計画基本計画(案)」を例に見てみますと、同計画では2021年2月1日(月)から2021年3月3日(水)の期間でパブリックコメントが募集されています。

下記のページでは、計画概要と策定経過が掲載されています。

糸満市総合計画 特設ページ | 糸満市

これを見ると、パブコメ終了後の3月には策定予定となり、これまで議会や策定会議、幹事会が終了したうえでパブリックコメントを募集しているようです。

こうした策定経過から分かることとして、次のことが挙げられます。

・パブコメ実施前に何度も委員会が開かれ協議されている
・パブコメ時の計画案はほぼ確定案である
・パブコメ実施後から公表までの期間はわずか

ですので、パブリックコメント募集のタイミングでは、ほぼ最終案が提示されており、ここから意見を取り入れて変更されることは現実問題として難しいと想像できます。
なお、最終案が出されているのも関わらず、住民から意見を募集する流れは、おおむねどの自治体にも起こっている状況です。

パブリックコメントの結果と回答の実際

上記のような事情により、原則としてパブリックコメントで意見を出して、大きな変更につながることは難しいことが分かりました。

下記のページで、パブリックコメントの結果と市の回答が見られるのですが、実際は「検討してまいります」「目指してまいります」といった回答が多く、実際に計画本文に反映されるものはわずかになっています。

「第5次糸満市総合計画基本構想(案)」に関する意見の募集(パブリックコメント)への回答について | 糸満市

これは「市は市民の意見をないがしろにしている」というわけではなく、そもそも意見が計画に反映させたいという趣旨で実施されなかったり、出された意見の内容がすでに記載されていたりするものがほとんどのようです。

大切なのは「具体的な文言の追加と変更」

となると、意見を出すこと自体、無意味じゃないかと感じると思いますが、実際にパブリックコメントが反映された事例として「糸満市子ども・子育て支援事業計画の中間年の見直し(素案)」を見てみましょう。

「糸満市子ども・子育て支援事業計画」の中間年の見直しに関するパブリックコメントの実施結果について | 糸満市

このパブリックコメントでは、学童に入るため対策について、

意見:学童に入れない事に対する具体的な対策がない。

回答:(中略)また、具体的な対策については、放課後児童クラブに関するニーズ調査を実施し、需要の見込量を踏まえて中学校区毎の整備計画を作成しています。(後略)

「糸満市子ども・子育て支援事業計画」の中間年の見直しに関するパブリックコメントの実施結果について https://www.city.itoman.lg.jp/docs/2018032600011/

といった意見とその反映がされています。
これはこの計画に再盛り込みをする回答ではありませんが、意見に対しての策としてニーズ調査を実施し、整備計画を作成するという市の考えが明らかになった内容でした。

直接的に計画変更はできないものの、市民が感じている①具体的な課題を指定し、②具体的な対策案を提示する、という2つのポイントが市政に反映されたということになります。

総合計画に重要なテーマが盛り込まれているか

話を総合計画に戻します。糸満市で現在、パブリックコメントを募集している「総合計画」について考えてみます。総合計画とは市の最上位計画として位置づけられており、糸満市が策定するすべての計画の基本となる、市政運営の総合的な指針となる計画です。

https://www.city.itoman.lg.jp/docs/2021012800059/

近年では法の改正で策定義務がなくなり「形骸化している」といった批判もある総合計画ですが、市町村独自の判断にゆだねられ、計画が作られています。分野別の計画はほとんどの場合、この総合計画に依拠しながら作られています。

そのため、もしあなたや身近な人が関連しているテーマ・課題に興味があって、その推進や改善を後押ししてほしい場合、総合計画でしっかりそのテーマ・課題について記載してもらうことが重要になります。なぜなら総合計画の記載の有無は、自治体が中長期的に政策課題として取り組むかどうかを判断する材料になるからです。

例えば、現在世界中で大きな議題になっている「ジェンダーギャップ」について、あなたが「もっと地域で取り組むべき!」とお考えだとします。

その場合、総合計画にきちんと「ジェンダーギャップ」に関するキーワードや具体的な施策案が盛り込まれているかどうかをチェックし、もし盛り込まれていなければ「記載してほしい」という意見を出すことができます。

実際に「第5次糸満市総合計画基本計画(案)」を見てみると、「政策5.多様性を認め合う社会をつくる / 政策の方針:社会の制度、慣習に根強く残る固定的な男女の役割分担の是正、人権の尊重や男女共同参画社会に向けた意識づくりや共生社会の実現に取り組みます」と、ジェンダーギャップについて触れられています。
また、「4.施策の展開(1)共生社会の推進 ・多様性への理解促進(講座開催等によるLGBTQを含めた多様性に関する市民理解の促進、家庭・地域・職場などにおける人権教育の推進、相談受付の充実)」と、策が挙げられているなど、しっかり盛り込まれています。

意見は強制するものではありませんが、パブリックコメントとして意見が届きやすいポイントはこの4つです。

  1. 計画内の対応関係に着目する
  2. 国や県の動向を見る
  3. 他市町村の動向を見る
  4. 記載のハードルを下げる

やっぱり意見を「出す」ことが大切

いかがでしたでしょうか。必ず意見を反映させることはできませんが「意見を伝える」ことができます。市民がどういう思いを持っているか行政に伝えることができると思います。

一方で、はじめに書いた通りパブリックコメントは、幅広い意見がたくさんの市民から出ていることに価値が生まれます。そのため、自分の意見を絶対反映させることにこだわらず、日々の思いを書き出してみることをお勧めします。せっかくなら自分の思いを届けてみてください。

この積み重ねが、地域の暮らしの充実を支えていきます。

糸満市の総合計画を読んでパブリックコメントを書いてみよう

最後に、糸満市では3月3日(水)まで「第5次糸満市総合計画基本計画(案)」のパブリックコメントを募集しています。ぜひこういった機会に糸満市民やゆかりのある方は思いを届けてみませんか。(実際に筆者も10の意見を書き出したのでこれから提出します)

ちょっとでも自分の住む地域に、喜びや悲しみ、怒りなどの関心を持って、他人ごとにせず、一緒に地域をつくっていく自分ごとにした仲間が増えたらいいなと思っています。せっかくならみんなでまちづくりしませんか?

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記事を書いた人
北村 正貴

ファシリテーター
初級地域公共政策士(認定番号 第F15-0427号)
1985年生まれ群馬県桐生市出身

人材育成や組織開発、働き方改革のコンサルティング、講座や研修講師。一方で地域おこし協力隊の経験を活かし、行政やコミュニティ組織の未来創造/プロセスデザインに向けた対話の場の企画運営にも携わる。

多くの依頼は「組織の運営上の課題を話し合いで解決したい」という漠然としたご相談から始まります。

北村ファシリテーション事務所では、企業、自治体、コミュニティ組織(自治会、町内会、まちづくり協議会)、NPO法人など様々な組織のご相談も積極的をお受けしております。

ご相談を通して要望を整理し、最適な要件を抽出。ワークショップや研修プログラムとして具体化・実行・定着を目指したご提案をさせていただきます。

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