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私がトーキングスティックで箸を使う理由

現在、糸満市の次期総合計画策定に向けたワークショップを行っています。各中学校区でその校区に住む人が参加する全6回の対話の場です。各回の参加者は20名以上。大人数が参加する場だからこそルールを設けている。その中の一つがトーキングスティックを使った進め方です。

トーキングスティックとはアメリカ先住民が議論を行う時に用いていた道具で会話をする時に理解不足によるムダな争いをなくすことができるものです。使い方としては、議論をする際にスティックを持っている人が発言をし、持っていない周りの人は黙って聞くというルールです。その間、持っていない人は遮ったり、否定したり賛成したりすることもできず、話者(スティックを持っている人)の話の内容を傾聴するという約束ができます。

私は以下の理由から沖縄の箸をトーキングスティックとして採用しています。

食事は相手とのつながりを深めるためのもの

人間は生きていくために食事はつきもので、生まれてから死ぬまで食事をやめることはありません。1人で食事をすることもありますし、誰かと食事をすることもあります。なかでも誰かと一緒に食事をすることはその人と仲を深めるバロメーターのひとつでもあると思っています。どこかでばったり会って話をするより、食事をしながらの方が深い話ができます。

その食事で必ず使うものが「箸」です。日本で箸を使うようになったのは今から約1400年も前のことで聖徳太子が広めたそうです。昔から日本では祭祀で使われており、神様が使う神器でもあったそうです。言葉として「箸」は「橋」につながるため、自然界と我々の住む現実の世界を結ぶものとしても定義されています。

今の私の考えは誰かの考えが基礎としてあります。この「誰か」は今いる友人知人、家族もそうですが過去の人も含まれています。昔の誰かの考えがあるから今の私の考えにつながる。つまり昔と今が架け橋になっています。

沖縄には黄と赤に塗られた箸がある。旅行で来たことがある人は食堂やお土産屋さんで見かけたことがあると思います。この「黄」と「赤」には意味があります。調べると諸説あるらしいですが地域おこし協力隊時代に地域のおばあちゃんから聞いたのは「黄色は太陽、赤は情熱、魔除け、人様」ということです。また、神聖な箸を使い食事をすることで無病息災、五穀豊穣につながるという話を聞きました。生きていくうえで必要な要素が詰まっているとそう思っています。

対話は地域とのつながりを深めるためのもの

今、糸満市内で地域の将来像を打ち立てるための地域ワークショップを行っています。中学生から70代までの人が参加し、対話をする場です。こういう場はやはり暗い雰囲気になりやすいです。誰もが見えない将来を面白おかしく、そして楽しく話ができれば最高だがそういうわけにもいきません。思いの強い人がいればその人に圧倒されてしまって、他の人は話しにくい空気になります。若者であればなおさらのことです。だからこそ沖縄の人になじみがあり、神聖なものである箸をトーキングスティックとして採用することで、各自が自信を持ち、自分の思いを話し、人の意見に耳を傾けて、未来について対話を進めてほしいという願いを込めています。

箸をトーキングスティックとして使うことはいかがなものかとご指摘をいただきました。私もはじめは考えました。だけど単に棒状のものであればなんでもいいという安易な考えでこの箸を採用したわけではないです。

私にとって同じ地に住んでいる者同士が地域の将来を話す場は神聖な場であってほしいと思っています。今があるのは先人たちが考え悩み、実行してきたことに基づいているからです。昔と今はいろんなことが様変わりしているけど、今いる人たちが子や孫、その次の世代に向けてどうすれば最適かを話すことに真剣に取り組む姿勢が必要だと感じています。

こういった含みがあって私は、トーキングスティックに古くからある沖縄の箸を採用しています。

この記事を書いた人
北村 正貴

1985年群馬県桐生市生まれ、沖縄県糸満市在住、ファシリテーター。2013年より地域おこし協力隊として単身沖縄へ。糸満市内で地域コミュニティの再生や集落の自立的発展を目指し活動。2015年、沖縄、ふるさと百選(集落部門)受賞。2018年に北村ファシリテーション事務所を設立。「多様な人が集う場を対話のできる場に」をテーマに行政、コミュニティ組織(自治会/町内会/まちづくり協議会等)、NPO団体、市民団体、企業など社会課題の解決と新しい価値の創造に取り組む多様な主体のコンサルティング支援を行う。

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北村ファシリテーション事務所