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コラム

まちづくりに失敗はない「資格プログラム」が教えてくれた大事なこと

めちゃくちゃ当たり前のことですが、まちは「その地域に住んでいる人全員」のこと。一人ひとりがなにを考えているか、悩んでいるか、どうしたいかを知ることなしにまちづくりは進みません。地方ほど発想力や行動力に長けたプロのゼネラリストが足りないとまちづくりに携わり始めてから感じるようになりました。

昨秋から琉球大学の資格プログラム「初級地域公共政策士」を目指して受講していました。理由は自身の活動をしていくなかで、根幹となる知識が乏しいと感じたためです。先日、プログラムを修了しましたがあくまでもスタートラインに近づけたと感じています。

仕事でもなんでもやる気があっても、機会や選択肢を知らないと行動に移せません。アップデートもできません。地方であればなおさらです。この記事では、まちづくりに携わる人全員に向けて、資格プログラムの全容と受講を終えて学んだことを記しています。

読んでいただいた方にとって少しでも視野が広がり、視点が増えますように。

初級地域公共政策士とは

初級地域公共政策士とは、まちづくりの課題に対してプロジェクトリーダーとしてチームマネジメント力を備えて、課題解決をしていく力を「資格」として獲得したひとを言います。ことなる職業セクターを越えて、地域の公共的な活動や政策形成をコーディネートし、課題解決や未来創造にみちびくことができ、こうした人と人の間にある公共を発信し、リードしていく人材として活躍してくことが期待されています。平成24年3月の地域公共政策士第1号が誕生以降、初級地域公共政策士336名、地域公共政策士29名を輩出しています。(令和2年3月現在)

「地域公共政策士」資格教育実施機関

  • 京都大学
  • 琉球大学
  • 京都府立大学
  • 福知山公立大学
  • 同志社大学
  • 京都産業大学
  • 京都文教大学
  • 京都橘大学
  • 龍谷大学
  • 佛教大学
  • 京都府立林業大学校
  • グローカル人材開発センター

資格のレベル

  • 初級地域公共政策士 Level.6の学士レベル
  • 地域公共政策士   Level.7の修士レベル

資格のねらいと養成する能力

  1. 地域社会の課題解決にあたる人材「地域公共人材」の能力を証明する
  2. 地域課題の解決に向けた地域公共人材の育成を通じてセクターを越えた産学官民との連携促進
  3. 米国キャップストーン教育プログラムと、欧州の教育と職能をつなぐ国際的フレームワークであるEQF(European Qualifications Framework)のそれぞれの長所を資格に組み込み、教育と職能を繋げていく

地域公共人材の教育プログラムが育成の対象とする人材は、実際に働く場としては自治体、NPO、そして企業といったように多様であることを前提としており、その意味での職業性はゆるやかに捉えている。

石田徹(2014)「「学校から職業への移行」の変容と大学教育」『地域公共人材叢書第3期第1巻 持続可能な地域実現と大学の役割』、日本評論社、45頁

このように「地域公共政策士」は特定された専門能力を証明する資格ではなく、公共領域における課題可決能力を証明する職能資格とされています。

専門的管理能力  → 地域社会の公共的課題の把握から解決に至るプロセス
倫理と基礎的知識 → 公共活動にかかる市民社会
総合的調整能力  → 各セクターを横断する公共的活動

資格教育プログラムの特色

地域公共政策士資格プログラムには4つの特色があります。 

特色1:どんな力が身につくのか

「地域公共政策士」は資格教育プログラムから地域公共政策士に求められる知識・技能・職務遂行能力の3つの能力を適切に組み合わせて実行できる力を身に付けていきます。体系化されたプログラムから3つの能力を総合的に学習サイクルしていくことで、社会活動の中で使える能力を120時間程度の学習から身につけていきます。

プログラムや科目に設定されている地域公共政策に関する社会課題に向き合いながら、チームワークやプレゼンテーション力などのプロジェクトを動かしていく能力を身につけていきます。初級地域公共政策士では、プロジェクトスタッフやサブリーダーとしての実践能力の獲得を目指します。

特色2:初級地域公共政策士の学習アウトカム

初級プログラムは、次のような知識、技能、職務遂行能力を養成するために作成されています。

  • 知識     地域社会における様々な課題の背景や文脈を理解できる
  • 技能     複雑な課題に対して、具体的な解決方法を提起できる
  • 職務遂行能力 特定のプログラムや課題について、業務を主体的に運用することができる
  • 総合的な到達目標として地域課題に対応した業務を主体的に判断して遂行できる能力の獲得(プロジェクトスタッフ、サブリーダーレベル)

※「地域公共政策士学習アウトカム定義」より文言を一般化
※各プログラムではテーマ・内容に応じた具体的な学習アウトカムが設定されている

特色3:資格教育プログラムでの学び

初級プログラムは、特色2の学習アウトカムを踏まえて、政策テーマやプログラム実施期間の特色を活かして、よりテーマ性の高いプログラムが作られています。また、テーマに応じたアクティブラーニング(※初級プログラムでは現場での実践活用が必ずプログラムの教育に含まれています)を通じて社会課題の現場にふれることで、実践的な能力が養成されます。

特色4:資格認定で身につけた能力の証明

初級プログラムを修了すると、初級地域公共政策士として認定されます。資格教育プログラムで身につけた能力や経験を初級地域公共政策士として申請し、キャリアパスとして活用できます。

初級地域公共政策士資格制度

初級地域公共政策士はLevel.6の学士レベルです。政策課題の課題解決に向けて主体的に実践していく力を資格教育から獲得したひとを指します。

  • 地域課題に対してプロジェクトスタッフやサブリーダーとしての能力養成を目指す
  • 学習アウトカムレベル6(知識、技能、職務遂行能力)
  • 現場での学習を含め合計120時間の学習量を資格教育プログラムに求める

資格科目認証制度の実施状況

  1. 令和元年度は20人の社会人受講生が登録(構成:行政職員17人、民間企業や団体3人)
  2. 琉球大学の学生も共通教育科目として122人が受講
  3. 令和2年3月時点の「初級地域公共政策士」資格取得者は13人(社会人9人、学生4人)

令和2年度琉球大学「初級地域公共政策士」資格科目認証制度一覧

科目認証制度とは4つのカテゴリーごとに認証科目があります。それぞれのカテゴリーの認証科目を選択していき、合計12ポイントを取得することで、初級地域公共政策士の資格取得を目指すことができます。

  1. 政策的思考 (2ポイントを取得)
  2. 政策研究の基礎知識 (4ポイントを取得)
  3. 政策得意分野づくり (4ポイントを取得)
  4. 政策基礎としての社会人基礎力 (2ポイントを取得)

令和2年度の科目認証制度一覧

カテゴリー科目名概要取得要件
政策的思考初級特別講義初級地域公共政策士として必要となる「政策的思考」を身につける科目として位置づけられています。eラーニングによる講座の受講、レポート作成を通じて公共空間への理解と産学官民(セクター)のつながりを理解し、課題解決に向けた行動を支える公共マインドを自分の関心に引き付けて深めます。既定の8講義から3つ(必須1・選択2)を選択して受講。各講座に設定されているテーマに合わせてレポートを作成。
政策研究の基礎知識政策立案能力強化プログラム国連の持続可能な開発目標(SDGs)を基準として、2030年に定められた達成目標から地域的な課題の発見のために地域のあるべき姿を踏まえ、地域活性化及び地域経営の具体的な課題を発見し、現実に即した政策立案を実際に取り組む。必修科目
地域円卓会議マネジメントの技法と実践地域社会の課題の共有に向けた対話の場である「沖縄式地域円卓会議」のマネジメントを行える人材を養成するため、ケーススタディを中心に課題共有の手法を学修する総論的な内容を扱う。
政策得意分野づくり社会的インパクト投資基礎概論社会的インパクト投資の概論を踏まえた上で、その方法の一つであるソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)について講義とグループワークにより具体的な進め方を実践的に学修する。選択必修科目(3科目から2科目を選択)
クラウドファンディング実践講座地域が抱える課題を解決するため新たな資金調達手法である「クラウドファンディング」という手法で、商品開発、サービス提供などの事業プランニングの手法を学修する。
ICTを活用した地域課題解決地域社会が抱える様々な課題の解決に不可欠なICTの活用を担う、地域公共人材養成を目的とする。具体的には、演習として地域課題解決にICTによるデジタル化をどのように適用するかについて検討し、グループで提案書を作成する。
政策基礎としての社会人基礎力ファシリテーションの技法と地域振興地域振興及び地域課題解決に活かせるファシリテーションの考え方と技法について座学とグループワークを通して詳しく学ぶ。これらを通して、地域振興や地域課題解決の現場で実践できるようになるための能力を身に付ける。選択必修科目(3科目から1科目を選択)
地域企業(自治体)のお題解決プログラム県内市町村(自治体)が抱える地域課題について、ヒアリングとフィールドワークを踏まえ、実際に課題解決に向けた取り組みを提案することで、これからの社会に求められる社会人基礎力やキャリア観の醸成を図る。
コミュニティ・プロデューサー養成講座マルチステークホルダーをつなぎ、地域を元気に盛り上げる能力「プロデュース能力」を高めるための実践的な内容を学修する。また、オレゴン州ポートランドをモデルに、課題抽出やビジョン策定などの手法も学習する。

 

まちづくりに失敗はない「資格プログラム」が教えてくれた大事なこと

地域やまちづくりを行うには「企画実践力」「コーディネート力」「プロデュース能力」が必要です。あえて一言でいうと「社会を自分ごとにできる力」です。

自分ごとにできる人は地域課題に対して当事者意識を持ちます。相談されたことに対して新しい提案をしたり、意見を聴いてくれる雰囲気をととのえたりできます。そのため、地域課題に対して「これは自分の課題でもある」という当事者意識を持ちやすくなります。

このような人、すなわち当資格プログラムでうたわれている「地域公共人材」を社会で育むことで、社会全体で公共性を担う必要性を推し進めることができます。

まちづくりを進めるにはビジョンを持つことが大切です。課題を発見したときに客観的な意見を持つことが求められます。それだけでなく、社会の向かう方向について自分が共感できるかという心理的な側面も重要です。

自身で目標設定を行い、たずさわる資源をコントロールしながら目標達成を目指します。そのために全体でなにを目指しているのか、目標や未来を共有することも大切です。住民一人ひとりが自発的にビジョンを目指して行動し、成果に結びつけることができると思います。

地域や課題の規模によって必要なスキルや知識が異なります。ですが自分ごとにできる人に共通するのは経験やスキルだけではありません。たくさんのノウハウや問題解決の手法など、年齢や経歴に関わらずインプットし、かみ砕いてアウトプットにつなげられます。

また、学び続ける姿勢を持って活動できます。これまでの知識だけでは目の前の課題を解決することができないと分かったとき、不足した知識を勉強し、実践に取り入れていけます。知識があるからまちづくりに携わるのではなく、つねに学び続け、新しい知識を吸収し続けられる前向きな姿勢が活動につながっていきます。

環境に合わせて柔軟に対応する姿勢も必要です。からみ合った問題をシンプルに考え、課題の本質をつかみます。本質を見極める力はどんな場面でも役に立つスキルです。目の前の課題を淡々とこなすのではなく、論理的に考え、関係性を読み取ります。そうすることで本質を見抜き、改善方法や効果的な解決策を生み出せます。

ほかにも調査や分析の結果・根拠も大切にします。なんとなくの直感で行動すると継続的な活動につながりません。官公庁や民間データを活用し、精度の高いアウトプットにつなげられるスキルが発揮できます。結果や根拠があることで緊急度の高いものや重要度の低いものなどの優先順位をつけることができ、組織マネジメントにつなげられます。

社会は個人ではなくチームで向き合うものです。多くの人と関わりながら成り立っています。課題に対してどの視点で向き合うかで対策も変わります。課題の本質を見極めることができれば、状況変化を的確にとらえることができます。優先順位を合理的に判断し、柔軟に活動できます。

日々の活動には振り返りが付きものです。ないがしろにしてはいけません。失敗したときに「どこがいけなかったのか」「何を変える必要があるのか」などをまわりと話し合い、失敗の理由をあきらかにしてつぎに活かします。失敗したことについて、その理由を直そうとせず責任転嫁していては、スキルアップにつながらず、結果に結びつきにくくなります。

誰もが自分でしてしまった失敗を認めたくない気持ちを持っていますが、失敗してもそれを改善の材料ととらえることで、社会はいい方向に向かっていきます。

前向きであることも必要な力だと感じました。解決がむずかしい課題にしてもあきらめず積極的に前に進んでいこうといった前向きな姿勢です。いい結果が出なくても、後ろ向きになるのではなく、どうすればさらに良い方向に進むかを見極め、前向きに行動をすることで、向上心や好奇心を新しい取り組みや改善策につなげることができます。

まちづくりに携わり、地域公共をつくっていけるかどうかは環境が大きく作用します。優秀な人であっても環境次第では能力を発揮できない可能性もあります。ですがビジョンを持てる世の中をつくることで良い人材の育成につながると学びました。

自身の思いと住む地域の将来像が近いとワクワクします。「こうしなければならない」「こうすべきである」などのべき論が浸透してしまうと、行動に移せない人が増えてしまいます。世代関係なく自分らしく暮らせる世の中を目指すために、自分らしく生きることが結果的に地域のためになると感じています。地域活性化と見聞きしますが、単につくるのではなく育てていく。育み続けられる「自分ごとにできる人」がこれからの社会に必要なのかもしれません。

まちづくりに携わるひとが、いろいろな角度から仕事や人生を考えられるよう、若輩者ながら記事にまとめてみました。

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記事を書いた人
北村 正貴

ファシリテーター
初級地域公共政策士(認定番号 第F15-0427号)
1985年生まれ群馬県桐生市出身

人材育成や組織開発、働き方改革のコンサルティング、講座や研修講師。一方で地域おこし協力隊の経験を活かし、行政やコミュニティ組織の未来創造/プロセスデザインに向けた対話の場の企画運営にも携わる。

多くの依頼は「組織の運営上の課題を話し合いで解決したい」という漠然としたご相談から始まります。

北村ファシリテーション事務所では、企業、自治体、コミュニティ組織(自治会、町内会、まちづくり協議会)、NPO法人など様々な組織のご相談も積極的をお受けしております。

ご相談を通して要望を整理し、最適な要件を抽出。ワークショップや研修プログラムとして具体化・実行・定着を目指したご提案をさせていただきます。

北村正貴 公式サイト|風通しの良い組織づくりを。