コラム

チームワークを高める「振り返りワークショップ」の特徴

「仕事に活かすために本を読んだり、セミナーに参加しているけど、実践に活かせない」、「一生懸命に仕事に向き合っているが、ミスをしてしまう」、努力をしていても成果になかなかつながらない悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

仕事で成果を上げるためには、日々、積み重ねてきた経験を活かす時間が必要で、活かすためにお勧めする手法が「振り返り」です。振り返りは経験を資産に変えるための大切な取り組みです。

過去を思い返して、今どうすべきかを深く考えることで未来への歩み方が変わると感じています。また、振り返りを日常に取り入れることで、同じ状況に陥ったときに気持ちに余裕を感じたり、時間や労力のロスを防げる下準備にもなります。

今回は「振り返り」についてまとめました。

チームワークに振り返りが必要な3つの理由

普段、どのように振り返りをしていますか?振り返りの雰囲気や進め方はどのような様子でしょうか?

私は「振り返りは仕事の良し悪しに左右する」と考えています。そのため、振り返りを行う場の雰囲気や進め方を戦略立てて実行することをお勧めしています。

振り返りが習慣化している組織は、過去を未来にどう活かしていくか、を対話できる場をつくっています。反対に、話す人が固定化していたり、人の揚げ足を取ったり、そもそも振り返りの目的が共有されていなかったりする「名ばかり振り返り」を行っている組織も多いのではないでしょうか。

振り返りをていねいに行う組織は説得力と柔軟性が育まれます。反対に、そうでない組織では衝動的に作業に取り掛かったり、経験が活かせなかったりする傾向が見受けられます。

振り返りをする場には、「次にどう活かすか」を起点に進めることが大切です。良かった点を褒め合うだけ、悪かった点を指摘するだけでなく、振り返る目的を共有(場合によっては振り返る目的も一緒に練る)したり、何をどう改善できるか全員で話し合ったりすることが大切です。

「日々の業務が忙しくて振り返る時間がない」という経営者やリーダーを多く見てきました。しかし振り返りも大切な業務です。そこで振り返りを行うメリットをまとめてみます。

活動を冷静に振り返ることで気づきを得られる

仕事をするなかで「気づき」を得ることは重要です。気づきを取り入れることで人としても企業としても成長に繋がります。最近では経験を通した学びの手法「経験学習」を取り入れる企業も増えています。

気づきを得るための重要な時間として、「活動を冷静に振り返る」があります。事業計画などをベースに良かった点、悪かった点、改善点をていねいにピックアップし、「気づくための時間」を意図的に作ることが必要です。

経験を自信に変える場にすることで貢献度につながる

振り返りを行うことで、活動の自信につながります。会社や社会への貢献度は社員一人ひとりの自信の有無で変わります。振り返りというとほとんどの方が「反省」をイメージするのではないでしょうか。いいイメージを持ちにくい「反省会」と名の付いた場には参加する気持ちも前向きにはなりにくいです。自分のダメだったところが露呈されるかもしれないという不安が続くと自信を失ってしまいます。

そうではなく、自信がついたことを実感できる場とすることで次に活かせます。普段から「反省会やろう」ではなく「振り返りをやろう」と言い方を変えるだけでもスタッフの取り組み方が変わります。

一旦止まることで視野を広く持てる

忙殺された毎日を過ごしていると、視野が狭くなりがちです。そのまま走り続けるとどこで支障をきたすか分かりません。このリスクを防ぐためには、立ち止まって視野を広く持つことが必要です。月末や半期の終わり、年末などの節目に振り返ることで気持ちを落ち着かせて、次の活動に繋げることができます。冷静になることで、活動中には気付かなかったことを発見できたり、新しい方向性を見出したりすることも可能になります。

結果を求めることに追われ、時間や効率ばかり気にしてしまうと、このような貴重な機会を損なわれてしまうでしょう。スタッフ全員で一旦立ち止まり、行ってきたことを俯瞰することも大切です。

目的と目標を立てることが振り返りのハードルを下げる

チーム活動のスタートラインとして目標を立てる方がほとんどだと思います。目標を立てることで業務が明確になり、振り返りも行いやすくなります。効果的なのはPDCAのような計画、実行、評価、改善サイクルを自然に繰り返せることです。PDCAは単なる円運動ではなく、スパイラルのように繰り返すことが大切で、成長につながりやすいチームは目標管理や振り返りを重要なものと位置づけています。

振り返りが目指すものは「業務全体の透明化と効率化」です。そのために意義や目的を共有しておく必要があります。

目的が基準になり事業活動の範囲を決める

たとえば自社サービスの宣伝イベントの目的が「認知度を高める」と「新規顧客を獲得する」ではイベントの内容が異なります。認知度を高めることが目的の場合、いかにたくさんの方に来てもらえるかを念頭に置いて企画します。ですが、新規顧客を獲得する場合、イベント終了後も関係性を維持できる取り組みを企画することが必要です。他にも、設定する目標が「参加者100名」と「新規契約30件」では、イベントの規模やスタッフの人数なども変わるため、企画の熟考が求められます。

目標の範囲は勝手に広がることを知っておく

いきなり活動に入っていくと、あれも必要これも必要、予想外のことが起こったなど、多くの人が経験していると思います。事業活動には時間と予算があります。だからこそ、何を目的にどこまで達成すればいいかの基準を実施後の振り返りで話し合うことで、予想外の出来事を防ぐことができます。

振り返りで決めた計画しかやらないということではありません。仕事に変更はつきものです。課題になりやすいのは突然の変更事案が「無秩序」に行われることによる負の連鎖を防げないことです。チーム活動における負の連鎖については「チームビルディングが中小企業に必要な理由と手法」にまとめていますが、企業や団体などのチーム活動では、人材、資源、時間を目的や目標を前提に計画していきます。そのため、無秩序な変更はスケジュールの遅れや予算オーバーなどを招きます。そんな事態を防ぐためにも振り返りで目的と目標を明確にすることが大切です。

振り返りができるチームは、客観的に課題を抽出することも得意です。達成させたい目標と現状を比較し、目標値とどのくらい差があるのか、その差を埋めるために何が必要か、どう改善すればいいか、という考えを主軸として活動しています。このサイクルがチームに根差すことで、スタッフの自主性を高め、生産性の向上にもつながります。

BtoB、BtoC関係なく世の中の「こんなことを実現したい」「問題を解決したい」という想いの解決策として事業活動があります。この事業活動の目的を理解し、納得したものを作業内容に落とし込み、活動に繋げることが良い循環を生む第一歩になります。

振り返りのやり方

人材育成の分野で振り返りは「リフレクション」と言います。かえりみて良し悪しを考える「省察」、経験をしっかりと「振り返る」、考えや行動、状態をかえりみる「内省」、これらを意味します。

経験したことが失敗であれ、成功であれ、経験から学習し、次に活かしていくことが重要と私は考えます。振り返りの最初の取り組みは「書き出す」です。やったことや到達点を書き出すことで「気づき」の見える化が大切です。

先日、フリーランスの友人と振り返りの場を設けました。その時に実施した方法を紹介します。この振り返り会は年末年始の時期を使い、お互いの1年を共有し、問いを立てながら気付いたことをストックしていき、新しい1年に活かす趣旨で行いました。

事前準備

A4用紙などに1年やってきたことをまとめておきます。月ごとに順番に書いていくでもいいですし、カテゴリー分けしておくのもいいです。大切なのは「思い返して」「可視化させておく」ことです。とはいっても、机に向かって「あれはいつしたっけ?」などと頭の中で思い出すには限界があるため、手帳やスケジュールアプリ、スマホの写真、SNSの過去の投稿などを見返しながらやると、少しずつ1年を思い出していけます。

時系列で順番に話す

振り返り当日。各自が準備した1年のまとめを共有します。順番は話したい人から始めるのが理想です。話し手はまとめた内容を聞き手に話します。書いてあることだけではなく、その時の感情を合わせて話すと、聞き手に伝わりやすくなります。聞き手は話し手の感情をメモをしていきます。メモが苦手な人は「喜ぶ」「悲しい」「怒る」など簡単に書き加えるだけでも問題ないです。大切なのはその瞬間、どんな感情になったか、です。一つひとつの行動や出来事を整理し、再解釈することで、全体の関連性に着目することができます。

聞き手からの深掘り質問

人には異なるバックグラウンドや性格があるため同じ活動をしていたとしても、同じ感情にはなりません。そのため、質問されることで今までなかった解釈や受け止め方を知ることができます。さきほど聞き手だった人は、メモを見返しながら深掘りする質問をします。より深く何が起きたのか、どう思ってそうしたのかといった、過去の経験に関して深掘りできる質問を行っていきます。誰かが一方的にアドバイスをしたり、否定したりすることがないよう事前にルールを設けておくことが大切です。そうすることで年齢や経験値、立場など阻害するものがない「公平」な振り返りが行えます。

他者からヒントを得る

一人で振り返りを行うとなると自分の価値観や観点の範囲内でしか振り返れないため、気づきや学びが生まれにくくなります。その点、複数で行う振り返りは、自分以外の振り返りを聞く、質問をする、他者の観点に触れる、ことで自分にヒントを得れますし、相手にヒントを提供できます。課題感や悩みの濃淡は人それぞれですが、対話を進めることで自身と類似点を見出したり、他者が行っている対処法などから、自分の中に新しい意欲が育まれていきます。

大きな変化より小さな実感

チーム活動は個人活動と違って悪い作用を良い作用にすることができます。だからこそ個人ではなくチームで振り返ることを習慣にすることで気持ちに余裕を生みます。

日本人は「反省」が好きな傾向がありますが、反省という言葉を使うと原因追及や犯人探し「なんで上手くいかなかったのか」と後ろ向きになりがちです。同じ反省をするにしても、「次回を上手くできるようにするにはどうすればいいか」と前向きに考えることが必要で、そのきっかけづくりとして「振り返り」が必要です。

組織に振り返りを取り入れようとするとき、発起人以外は前向きな気持ちではないかもしれません。新しい取り組みを行うことはこれまでのやり方を否定し、慣習や文化を変えることになるからです。リーダーはメンバーに対し、「なぜ考えないのか」「どうして良くしようと思わないのか」と感じてしまうかもしれません。

しかし、これは決して周りの人が悪いわけではないと思います。変化させていくよりも現状のままでいるほうがメリットがある、変化させることでデメリットが大きいのではないかと先入観で考えてしまうだけです。

考え方が違うのは当然です。ですが、違う考えがすべて間違っているわけではありません。組織活動のプロセスは、急いだり、欲張ったりしても良い方向には進まないものです。無理やり変えようとすればするほど抵抗も大きくなります。大きな変化より小さな改善を好む日本人だからこそ、少しずつ「振り返る」を取り入れていく慎重さも大切です。

突然、「来週から毎週末、振り返りをしよう」と上司やリーダーから言われるより、半年や四半期に1回取り入れるように働きかけていくことでスタッフも抵抗なく始めることができます。組織に振り返りを取り入れるポイントは「小さな実感」の積み重ねです。小さな一歩を積み重ねることで、気持ちを新たに振り返ることができます。

振り返りは仕組みづくりのスタートライン

振り返りはゴールでもあり、スタートでもあります。仕事を仕組み化することで労力や時間のロスを防げます。「仕組みをつくる」ことで仕事を一つ増やすわけですから面倒ではあります。しかし、振り返りで行う仕組み化の作業により、効率を上げて、自分のための時間や思考に費やす時間が増え、新しい仕事も生み出しやすい環境をつくることができるのではないでしょうか。

振り返りで得られる付加価値はとても大きいと感じています。書き出して、対話をして、新たな気づきを積み重ね、計画することを仕組み化していく。一度やればOKということではありません。状況の変化とともに内容も考え方も変わります。そのため、アップデートできるよう磨き上げていく必要があります。作業に振り回される日常を一休みして、自発的に仕事と向き合える日を目指して「振り返り」を習慣化させていくとスタッフの充実感も変わってくるのではないでしょうか。

振り返りがうまく機能すれば、あせりやストレスから解放されると思っています。やるべき仕事が振り返りで可視化されるからです。計画通りに進まないのであれば、見直す。いたってシンプルです。振り返りにある夢や目標のリマインド効果を利用することでモチベーションを自分でコントロールできるようになります。

場に適した振り返り時間を取ること、この目的意識さえしっかりしていれば、まっすぐ歩み続けられます。感じたこと起こったことの振り返りを継続することで成果に良いつながりを生むと考えます。日々成長をしていくためには、過去を思い返して、今どうすべきかをチームで深く考える。そうすることで未来が切り拓かれていきます。

\ この記事をシェアする /
記事を書いた人
北村 正貴

ファシリテーター・初級地域公共政策士(認定番号 第F15-0427号)
チーム活動に大切な「対話の方法」を教える研修やワークショップの企画運営をはじめ、組織開発(コーチング/ファシリテーション)のコンサルティング支援を行う。

「組織の"働き方"の課題を話し合いで解決したい」という漠然としたご相談から始まります。

北村ファシリテーション事務所では、あらゆるコミュニケーションの活性化を目指して、組織が目指したい状態に向かうために対話の場づくりでサポートします。働きやすい職場づくりに向けた対話ワークショップやスタッフ研修はお任せください。

北村ファシリテーション事務所が提供する対話支援サービスについてPDF資料をご用意いたしました。 ご活用いただけますと幸いです。