コラム

ファシリテーションとパーカッションの共通点

私はファシリテーターをやりながらパーカッションをやっています。理由としては双方に必要な以下の共通点から刺激がもらえるからです。

  1. 隙間をいかに埋めるかが勝負どころ
  2. 出しゃばり過ぎは良くないが出なさすぎでは意味がない
  3. チームとして目指す方向を見失ってはいけない

これらを踏まえて私が音楽をしている理由と経験してきたことを書いてみます。

音楽(パーカッション)との出会い

高校まで地元桐生市で育った私にとって「県外」という場所は魅力のかたまりでした。当時の情報源は友人やテレビからがほとんどで「どこどこに〇〇ができたらしい、今度遊びに行こう」「今〇〇が流行ってるらしい、今度買いに行こう」、この流れで日々の予定が決まっていきます。

高校の修学旅行で沖縄に行きました。友だちと旅行に行けるなんて最高!しかも沖縄だなんて!そうワクワクしていたことを強く覚えています。修学旅行におみやげは付き物でお菓子やキーホルダーなど、限られた資金でいかに納得のいくものを買うかが勝負でした。そんな中、私は民芸品店で「ジャンベ」というアフリカの太鼓を見つけ、何を思ったか私は沖縄でジャンベを買った。

当時は名前も扱い方も分からなかったけど、何か惹かれるものがあって買ったことを覚えています。叩くだけで音が鳴り、テンションが上がるそれだけでした。案の定、持って帰ってきても叩かず、服を上に置く棚と化しており後悔していました。時は立って私は大学進学で地元を離れ、県外に出ることになりました。

入学して間もなくピロティでジャンベを叩いている人がいました。勝手にシンパシーを感じて近づきました。これが私が音楽に興味を持ち始めたきっかけ。

隙間をいかに埋めるかが勝負どころ

大学でとあるギタリストに出会います。彼はギターが上手で常にギター1本と紙パックのジュースを持ってピロティのベンチで演奏していました。そんな彼からパーカッションとして一緒に演奏しないかと誘われ、いろんなジャンルの音楽に触れました。ポップス、ジャズ、ブルースの何から何まで。

彼がきっかけでお店で演奏することになりました。演奏するのはスティービーワンダー。彼の歌とギターのバックで私は演奏することになる。曲目は「Ribbon in the Sky」と「Lately」。

スティービーワンダーの名前は知っていたけど曲はほとんど知りませんでした。彼は何度も「隙間を埋めてくれればいいから」と言ってくれました。フリーセッションを数こなしていたから安心していましたが、すでに完成された曲となるとまったく異なり難しいのを覚えています。いかに既存の曲調が持つ世界観を壊さないか、これが私の課題でした。

イントロはこのタイミングで入る、ギターの音色が薄くなったら打楽器を差し込む、転調のタイミングで音数を増やす減らすなど、挙げればきりがない注文がたくさん入りましたがこれが面白かったです。

すでに流れているものの隙間をいかに埋めていき、どう増幅効果を出せるか。ある程度教わると「好きにやってみて」と次のステップに入った気がしました。数こなすことで、ここにあの音が欲しいなとか、ここではギターが目立つから抑えよう、と分かってきました。足し算と引き算の繰り返しの中でどう掛け算をしていくかが肝で、ミスればゼロに近いものになるがガチっとハマったときはお互い視線が合って100にも1000にもなったと感じたのを覚えている。

この隙間をどう埋めていくかはファシリテーションに似ています。チームの状況を見極めて適切なものを提案する。提案しすぎても主体性がそぐわれるし、提案しなさ過ぎても主体性が変化していかない。想定していないことが起きてしまった時のことを想定しておく必要があります。

想像力が必要不可欠だからこそファシリテーターには準備の時間が相当必要になります。私がファシリテーターを務める際の準備についてはまた別の機会で書きます。

出しゃばり過ぎは良くないが出なさすぎでは意味がない

ファシリテーターの関わりとルパン一味の関わり方は似ている。音楽仲間の先輩からこう言われたことがあった。

「バンドはルパン一味と一緒だ」

ルパン三世は怪盗ルパン(ルパン一世)の孫、ルパン三世を主人公に置いたナンセンス、コメディー、スラップスティックの要素を多分に含んだアクション作品です。主要メンバーはルパン三世、次元大介、石川五ェ門、峰不二子、銭形警部。主役はルパンであるが他のメンバーがいないと物足りない。いなくても物語は成立するが、いることで面白さが変わってくる。

パーカッションはまさにルパン一味の関係性そのまま。ボーカルにギター、ベース、ドラムがいることで一定水準は保たれる。だけどパーカッションが入ることでできることが増幅する。いなくても成り立つ。

ボーカルであるルパンが前線にいるとき、他のパートはコツコツと仕事をこなす。ボーカルが引いた時はソロパートとしてギターやベースがうなったり、ドラムソロをこなしていく。パーカッションもここは同じ。

これは次元大介のマグナムであったり
石川五ェ門の斬鉄剣であったり
峰不二子のお色気や策士っぷりだったり
銭形警部のルパンをとっつかまえる執念だったり

いなくても成立するが、いることで観る者に変化を与えられる。もちろん彼らが主役になる話もある。ファシリテーターはまさにルパン一味。

私は今、地域づくりファシリテーターの活動をしています。目指したい方向や抱えている課題をどう前進させていくかのタイミングで私のようなファシリテーターが必要とされると感じます。

唯一違うのはファシリテーターは主役ではないということです。あくまで歌舞伎役者の後見役である黒子のような立ち振る舞い方。必要な場面で最大限の持ち味を出すサポートをします。とはいえもちろん意見を求められれば思っていることを伝えるし、行動もします。すべては地域の思いを前進させていくため。
ルパンの思いに賛同し、随所でサポートする彼らと同じ。

チームとして目指す方向を見失ってはいけない

今でも私はバンド活動をしています。スカバンドとジプシーバンドの2つです。掛け持ちしている理由は引き際や押し際を考えて形にしていくことが面白くジャンルで色が違うからです。音楽としてのジャンルが違うことで面白さも変わってきます。

このジャンルがいわゆる「チームで目指す方向」の根幹にあるものだと思っています。音楽のジャンルにはそれぞれ特徴があります。この特徴を無視して演奏をしてしまうと、別のものに見えてしまうし、余計なものになってしまう。だからこそそのチームが「どこをスタートとしているか」ということと、「どこを目指しているか」を把握しておく必要があります。

これが私の思うファシリテーションと似ているところです。

私の課題

バンドメンバーに申し訳ないなと思うことがあります。それは主役としての出方が分からないということ。ソロパートを与えられたときはしどろもどろになります。これは私のファシリテーションの型にも似ていて課題でもあります。

ファシリテーターとしても同じで、こういうことをやってみたいなと思っていても、その思ったことが他者ありきでないと行動が伴わないということです。主役がいて私が黒子としている環境で数々の経験をしてきたからこそ、そういう考え方、行動の仕方になってしまっています。

私はファシリテーションという言葉を後から知りました。私が地域おこし協力隊時代にやっていたこと=ファシリテーションだったということです。教えてくれたのが当時、一緒に事業を進めていたNPOのスタッフの存在です。尊敬しているファシリテーターのひとりです。

冒頭にも書いた以下の3つは私が意識し続けていること。
ファシリテーターとしてもパーカッショニストとしても。

  1. 隙間をいかに埋めるかが勝負どころ
  2. 出しゃばり過ぎは良くないが出なさすぎでは意味がない
  3. チームとして目指す方向を見失ってはいけない

いつかルパンのように大立ち回りする機会を持ちたいと思っています。最近では少しずつその道をつくっている途中です。それはまた別の機会に。

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記事を書いた人
北村 正貴

ファシリテーター・初級地域公共政策士(認定番号 第F15-0427号)
チーム活動に大切な「対話の方法」を教える研修やワークショップの企画運営をはじめ、組織開発(コーチング/ファシリテーション)のコンサルティング支援を行う。

「組織の"働き方"の課題を話し合いで解決したい」という漠然としたご相談から始まります。

北村ファシリテーション事務所では、あらゆるコミュニケーションの活性化を目指して、組織が目指したい状態に向かうために対話の場づくりでサポートします。働きやすい職場づくりに向けた対話ワークショップやスタッフ研修はお任せください。

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